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くろゆり

黒百合

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《黒百合(くろゆり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 78,148 字 · 154 頁

青空文庫

既にその時もあれじゃ、植木屋の庭へこの藁草履を入れて掻廻わすと、果せるかな、、蟷螂。」

「まさか、」

「うむ、植木屋の娘と其奴と、貴様、植込の暗い中に何か知らん歎いておるわい。地面の上で密会なんざ、立山と神通川とあって存する富山の体面を汚すじゃから、引摺出した。」

「南無三宝、はははは。」

「挙動が奇怪じゃ、胡乱な奴等、来い! と言うてな、角の交番へ引張って行って、吐せと、二ツ三ツ横面をくらわしてから、親どもを呼出して引渡した。ははは、元来東洋の形勢日に非なるの時に当って、植込の下で密会するなんざ、不埒至極じゃからな。」

「罪なこッたね、悪い悪戯だ、」と言懸けて島野は前後を見て、杖を突いた、辻の角で歩を停めたので。

「どこへ行こうかね。」

榎の梢は人の家の物干の上に、ここからも仰いで見らるる。

「総曲輪へ出て素見そうか。まあ来いあそこの小間物屋の女房にも、ちょいと印が付いておるじゃ。」

「行き届いたもんですな。」

「まだまだこれからじゃわい。」

「さよう、君のは夜が更けてからがおかしいだろうが、私は、その晩くなると家が妙でないから失敬しよう。」

「ははあ、どこぞ行くんかい。