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あとのまつり

あとの祭り

山之口 貘

線上閱讀山之口 貘《あとの祭り(あとのまつり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,099 字 · 4 頁

青空文庫

」と、叱られたことを知っているからなのだ。

こうして、家のもの二人が、寝しずまったころには、どうやら、ぼくのペンが原稿紙の上で働いているのである。そのうちに、夜なかの一時になり三時になり、あるいは、四時五時になることもしばしばであって、朝の気配の近づく頃は、そろそろぼくの寝支度というわけで、結局朝のない生活を、永い間繰り返して来たのである。

ぼくには、むかしから、うなされる癖がある。それは、書きかけた仕事のあるときに多いようで、その仕事が、思うようにはかどらず、四苦八苦の揚句を、へとへとになって寝るときなどは、きっと、うなされるのである。それがいかにも、悶え苦しんでいるような様子なのだそうで、そんなとき、たびたび女房から、肩を小突かれてぼくは眼を覚ますのである。時には、「おとうさん、おとうさんってば。」と言いながら、ミミコが、ぼくのアゴや肩をゆすぶっていることもあるのだ。

ある朝のこと、例によって、「おとうさん、おとうさんってば、おきなさいよ。」と、ミミコに、あごをゆすぶられて眼を覚ました。

「また、うなされたのかい?」と、ぼくはねとぼけて言った。