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いなか、の、じけん
いなか、の、じけん
夢野 久作
線上閱讀夢野 久作《いなか、の、じけん》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 39,535 字 · 78 頁
X光線
X光線
電車会社の大きなベースボールグラウンドが、村外れの松原を切り開いて出来た。その開場式を兼ねた第一回の野球試合の入場券が村中に配られた。おまけにその救護班の主任が、その村の村医で、郡医師会の中でも一番古参の人格者と呼ばれている、松浦先生に当ったというので、村中の評判は大したものであった。本物のベースボールというものは、戦争みたように恐ろしいもので時々怪我人が出来る。救護班というのは、その怪我人を介抱する赤十字みたようなものだ……なぞと真顔になって説明するものさえあった。
当の本人の松浦先生も、むろんステキに意気込んでいた。当日の朝になると、まだ暗いうちに一帳羅のフロックコートを着て、金鎖を胸高にかけて、玄関口に寄せかけた新調の自転車をながめながら、ニコニコ然と朝飯の膳に坐ったが、奥さんの心づくしの鯛の潮煮を美味そうに突ついているうちに、フト、二三度眼を白黒さした。それから汁椀をソッと置いて、大きな飯の固まりを二ツ三ツ、頬張っては呑み込み呑み込みしたと思うと、真青になってガラリと箸を投げ出してしまった。奥さんが仔細を尋ねる間もなく立ち上って、帽子を冠って、新しい靴下の上から、古い庭穿きを突かけると、自転車に跨りながらドンドン都の方へ走り出した。