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おごそかなかわき
おごそかな渇き
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《おごそかな渇き(おごそかなかわき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,042 字 · 71 頁
もちろん彼はそんなことは口にしなかった。りつ子も興味はないのだろう、焼きむすびを噛みながら、両手をひろげて伸びをした。
「ああ、あったかいわ」とりつ子は云った、「峠ひとつ越しただけでこんなに違うのね」
「いまはね、でもこっちにも雪だって降るんだよ」
「でも涸沢とは風が違うわ」とりつ子は云った、「涸沢の風は針の刺さるようにひりひりするわ、でもこっちの風だって寒いけれど、針が刺さるようじゃないわ、あっ」
あっと云ってりつ子は川のほうを指さした。
「ほらほら、魚がいるわ」少女は指示した手を動かした、「ほら、あそこにも、あそこにもよ、あれなんの魚かしら」
「よくわからないけれど、たぶん鮠かなんかだろうね」
「はえっていうのね、知ってるわ」
「土地によってはえともはやとも云うらしい、夏になるまえには腹が赤くなるので、赤っ腹ともいうらしいね」
「どうしておなかが赤くなるの」
交尾期になるからである、と彼はすぐにはいえなかった。しかしそれは却って不自然だと思い、そのとおりに説明した。りつ子は少しも恥ずかしがらず、感心したように「ふうん」と云っただけであった。
「それまでは黒いだけなのね」