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おじさんのはなし

おじさんの話

小山 清

線上閱讀小山 清《おじさんの話(おじさんのはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,232 字 · 42 頁

青空文庫

たろう。気象もしっかりしていて、どうしてなかなか若い者に負けてはいなかった。またおじさんには、おじさんのような境遇にある年寄が持っていそうな厭味が少しもなかった。人に阿ったり、主人に取入ったりするようなところが少しもなかった。誰に対しても、一対一で向っていた。それだけに頑固で人に譲らぬところがあったけれども。そして、そういうおじさんの心意気はその風貌姿勢にあらわれていて、なんとなく飄々とした脱俗味さえ感じられた。

おじさんと一緒に銭湯に行ったとき、冬のことであったが、湯船の中でおじさんが、――はじめはこちらの体が冷えているから、まずぬるい方の湯に這入って、あとであつい方の湯に這入ればいいという、そんな至極当り前のことをもっともらしい顔をして講釈したとき、いっしょに湯に漬っていたいい年の男が、いかにも感に堪えたような顔をしておじさんを見て、

「あなたさまは、ひそかに世の中のために御心労なさっていられる、○○先生のような方ではないでしょうか。」

と云った。○○先生というのはおそらく心学とか道学とかいうものの先生なのであろうが、そのときおじさんは、あたかもその○○先生であるかの如き顔をして澄ましていた。