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しじみがし

しじみ河岸

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《しじみ河岸(しじみがし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,438 字 · 51 頁

青空文庫

お絹はしゃくりあげながらいった、泣く児が泣き疲れて、うたうような調子で、お絹はゆっくりと続けた、「お父つぁんや直が、安楽に暮してゆけるなら、自分はどうなってもいい、卯之さんは死んじまったし、生きていたってしようがない、生きているはりあいもないし、もう躯も続かない、なんでもいいから休みたい、手足を伸ばして、ゆっくり、いちど休めたら、それでもう死んでもいいと思ったんです」

律之助はなにもいわなかった。

「八つの年におっ母さんに死なれてから、あたしずっと働きとおしました」とお絹はいった、「お父つぁんに倒れられてからは、二人をやしなうために、自分は三日も食わずに働いたこともあります、でも疲れきっちゃいました、――お父つぁんがなんとかなったら、卯之さんといっしょになる約束でしたが、その卯之さんも死んじまったし、お父つぁんと直のことはひきうけてくれるというもので、それであたしは承知したんです」

「清太郎を呼んでやろうか」と彼がいった。

「あたしは約束は守ってもらえると思ってました」とお絹はいった、「二人のことは安心だし、この牢屋へ来てっから、生れて初めて、ゆっくり手足を伸ばして休めたし、――本当に生れてっから初めて、暢びり休むことができたし、もういつお仕置になってもいいと思っていたんです」