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そのきどをとおって

その木戸を通って

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《その木戸を通って(そのきどをとおって)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,448 字 · 44 頁

青空文庫

「おい待て、それはおれの伴れだぞ」と彼は呼びかけた、「きさまたちなに者だ」

男たちはとびあがりそうになった。

「吃驚するじゃねえか、おどかすな」と傘を持った男が吃りながら云った、「そう云うてめえこそ誰だ」

「その娘の伴れだ」

「ふざけるな」と娘の手を取っている男がどなり返した、「伴れならどうして放っぽりだしにしておくんだ、いまごろのこのこ出て来やあがって、てめえこの娘をかどわかそうとでもいうつもりだろう」

「そうだ、そんなこんたんにちげえねえ」と傘を持った男が云った、「娘さん、おめえこの男を知っていなさるのか」

娘は脇のほうを向いたままで、そっとかぶりを振った。

「私だぞ」と正四郎が呼びかけた、「平松正四郎だ、忘れたのか」

「いいかげんにしろ、娘さんは知らねえって云ってるじゃねえか」と傘を持った男が遮った、「おれたちは本宿の駕籠徳の者で、おれは源次こっちは六三、街道筋ではちっとばかり名を知られた人間だ、へんなまねをしやあがるとただあおかねえぞ」

「そうか、駕籠徳の者か」と云って正四郎は笠をぬいだ、「それならこの顔を覚えているだろう、おれは城下の堰端にいる平松正四郎だ」