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あじさい
たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集
佐藤 春夫
線上閱讀佐藤 春夫《たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集(あじさい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,277 字 · 84 頁
はそれだから云うのだよ、とはげしいふきげんな表情を稲妻のように閃かした。(これは外の人にはたいがい見えないで、わたくしにだけはよくわかるものです)どいつもこいつも、敵ながら天晴れな一見尤もらしい謀略にまんまとひっかかって、国を挙げて、さも楽しげに亡国の一路を辿っているのを気がつかないのかと慨歎した。言葉はいつもおだやかな人があれだけの口ぶりなのだから、よくよく気が昂ぶって腹の底は煮えかえって憤死でもせんばかりの気持かと思えた。
常に三郎のアルバイトに同情していたから、おそるおそる、酒もダンスもアルバイトの憂さ晴しでしょう。音楽はいい趣味なのだから、そう何から何まで口やかましく申せませんからと云うのを、お前がそう一々おれに反抗して子を甘えかすからと、かん癖の強い老将軍は最後に三郎を呼びつけて、青年が人生を享楽しようとするのをとやかくいう気はないが、男子がちかごろのきさまのように柔弱に流れるのをおれは黙っては見て居れない。同じく近ごろのはやりでもせめては豪快な山登りでも楽しむことか、ダンスの音楽のとは以ての外という老将軍は息子の目にも全くのもうろくおやじのよまい言と聞えて、腹立しいよりはむしろ気の毒になさけなく思えたのかも知れない。