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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
線上閱讀佐藤 垢石《『たぬき汁』以後(あわもりものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 118,470 字 · 244 頁
このときの料理は、狸汁のように葱と蒟蒻を味噌汁のなかへ刻み込み、共に穴熊の肉を入れて炊いたのだが、海狸の肉に似ていると思った。
穴熊というのは、南総里見八犬伝の犬山道節が野州足尾の庚申山で化け猫を退治するとき、猫といっしょにとっちめた山の神のことである。つまりマミだ。国によっては穴熊を貉と呼んでいるところもある。
しかし、ほんとうの熊を食ったのは、つい五、六年前の話だ。私の義弟が、上州吾妻郡嬬恋村大字大前と呼ぶ山村に、村医をつとめていたことがある。この山村は、上州と信州との国境に近く、東北に八千尺の白根火山が聳え、西に吾妻山、南に鳥居峠を挟んで浅間山が蟠踞している山また山の辺境だ。
さらに、その奥の渓に干俣という部落がある。ここに、親子の熊捕りの名人がいて毎年春の雪解け頃になると、白根火山のうしろに続く万座山の奥へ分け入って、四、五頭の熊を撃ち獲るのであるが、ある年親子の者が大熊を撃ち倒して、村の医者さまである義弟のところへ舁ぎこんだ。
折柄、私は吾妻渓谷へ雪代山女魚を釣りに行き、義弟の家へ泊まっていたのでこれを見ると素晴らしい黒熊だ。鮮やかな月の輪が、咽を彩っている。