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とむらいきかんしゃ
とむらい機関車
大阪 圭吉
線上閱讀大阪 圭吉《とむらい機関車(とむらいきかんしゃ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,729 字 · 371 頁
白妖
一
むし暑い闇夜のことだった。
一台の幌型自動車が、熱海から山伝いに箱根へ向けて、十国峠へ登る複雑な登山道を疾走り続けていた。S字型のジッグザッグ道路で、鋸の歯のような猛烈なスイッチバックの中を襞のように派出する真黒な山の支脈に沿って、右に左に、谷を渡り山肌を切り開いて慌しく馳け続ける。全くそれは慌しかった。自動車それ自身は決してハイ・スピードではないのだが、なんしろ大腸の解剖図みたいな山道だ。向うの山鼻で、ヘッド・ライトがキラッと光ったかと思うと、こちらの木蔭で警笛がなると、重苦しい爆音を残して再びスーッと光の尾が襞の向うへ走り去る。同じところをグルグル廻っているようだが、それでいて少しずつ高度を増して行く。
タクシーらしいが最新型のフェートンだった。シェードを除った客席では、一人の中年紳士が黒革の鞄を膝の上に乗せて、激しく揺れながらもとろとろとまどろみ続ける。背鏡で時どきそれを盗み見ながら、ロシア帽子の運転手は物憂い調子でハンドルを切る。
この道はこのままぐんぐん登りつめて、やがて十国峠から箱根峠まで、岳南鉄道株式会社の経営による自動車専用の有料道路に通ずるのだ。