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とむらいきかんしゃ

とむらい機関車

大阪 圭吉

線上閱讀大阪 圭吉《とむらい機関車(とむらいきかんしゃ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,729 字 · 371 頁

青空文庫

ここに隠れてるから、ここまで、子供を連れて来てくれんか。それから、一緒に逃げてくれ」

妻が言葉も継げずに、呆気にとられてためらっていると、安吉はかぶせるように続けた。

「とてつもない、恐ろしい陰謀なんだ。おれはもう、海を見るのさえ恐ろしくなった。……こうしてるのも、やりきれん。おい、早く逃げ仕度をして、時坊を連れて来てくれ。わけは、それからゆっくり話す」

北海丸と一緒に海の底へ沈み込んで、死んでしまったと思われていた夫の安吉が、全く不意に帰って来た。そして、どこをどんなにして一年を過して来たのか、何者かを激しく恐れながら、子供を連れて一緒に逃げてくれと云う。驚きと喜びと、不安の一度に押寄せた思いで、たった今まで沈滞した諦めの中に暮していた女は、激しい動揺とためらいに突落されたのだった。

けれども、やがて女は決心したように夫の側を離れると、云われるままに町外れの、小さな二階借の自宅へ引返して来た。そして半ば夢見るような気持で、まだろくに歩けもしない子供を背負ったり、いつも子供を預って貰う階下の小母さんに、それとない別れを告げたりするうちに、少しずつ事態が呑み込めるようになって来た。