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とむらいきかんしゃ
とむらい機関車
大阪 圭吉
線上閱讀大阪 圭吉《とむらい機関車(とむらいきかんしゃ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 186,729 字 · 371 頁
鯨のとどめを刺すに使う捕鯨用の鋭い大きな手銛で、虫針に刺された標本箱の蛾のように板壁へ釘づけにされた安吉へ、女が寄添うと、断末魔の息の下から必死の声を振絞って、
「く、く、釧路丸の……」
とそこまで呻いて、あとは血だらけの右手を振上げながら、眼の前の羽目板へ、黒光りのする血文字で、
――船長だ――
と、喘ぎ喘ぎのたくらして行った。そしてそのまま、ガックリなってしまった。
三
根室の水上署員が、弥次馬達を押分けるようにして惨劇のその場に駈けつけたのは、それから三十分もあとの事だった。
倉庫の横の薄暗い現場の露次には、激しい格闘の後が残されていた。板壁に釘づけにされるまでに、もう安吉はかなりの苦闘を続けたと見えて、全身一面に、同じ手銛の突創がいくつも残されていた。激しい手傷を受けて、思わず板壁によろめきかかった安吉に、背後から最後のとどめを突刺して、そのまま犯人は逃げ去ったものらしい。
取外された屍体は、直ぐに検屍官の手にうつされたが、しかしこれと云う持物はなにもなく、安吉がどこをどんなにして歩き廻っていたか、恐ろしい秘密を物語るような手掛は、一つも残っていなかった。