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ねずみとバケツのはなし

ねずみとバケツの話

小川 未明

線上閱讀小川 未明《ねずみとバケツの話(ねずみとバケツのはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,785 字 · 8 頁

青空文庫

ねずみは、その言葉をきくと、哀れになりました。

「どうしたのですか? こればかし動いて、そんなに痛いというのは……。」と、ねずみはたずねました。

「ねずみさん、私は、このながしに長い間役をつとめていました。そのうちに体のところどころがさびて、傷がついて、もう水をいれる力がなくなりかけた時分に、セメンでその傷口をうずめられました。その後も、かなりしばらくの間は、私は、役をつとめたのであります。いよいよだめになると、こんどは、ここに出されてごみのいれ物となりましたが、もう体じゅうが傷んでしまい、すこし動くと、セメンを詰めたところが欠けて、痛んで痛んでたまらないのでございます。」と、バケツは答えました。

ねずみはその話をきいて、このバケツは、自分の子供の時分に、水を飲もうとして落ちたときに、まだぴかぴか光っていばっていて、無情であったのだということを思い出しました。しかし、このねずみはりこうなねずみでありましたから、いま、こんなふうになってしまったバケツに対して、なにもいいませんでした。ただ心の中で、その末路を憐れんでいたのであります。

「それはお気の毒のことです。