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ひとをたのまず
ひとをたのまず
小川 未明
線上閱讀小川 未明《ひとをたのまず》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 1,355 字 · 3 頁
三人は、神社の前へくると、境内へはいりました。あたりを見ると、そこの鳥居にも、かきねにも、こないだの、選挙のビラが、はりつけられてあり、また、方々にらくがきがしてありました。だから、それを、きれいにするためだと、すぐわかりました。
彼らは、石段のところで、ひとまず、手に持ったものをおいて、休みました。
「これを、みんなきれいにするのかなあ。」と、乙は、境内を見まわしました。
「なに、わけはないさ。」と、甲が、ほほえみました。こんなときでも丙は、だまっていました。
私は、とりすました甲にも、また、陰気に見える丙にも、どこか不自然なところがあるのを感じました。ひとり、色の黒い乙だけは正直で、明朗な気がしました。
とつぜん、丙が、石段を下りて、鳥居の外へ出ていきました。
「にげるんでない、ずるいや。」と、甲がおこりました。
「すぐ、帰ってくるのだろう。」と、乙がいいました。
「ぼく、よんでくるよ。」と、甲が立ちかけました。
「ほっておおきよ。」と、乙はとめたけれど、甲は、境内からかけ出しました。
私は、用たしをするためここをはなれなければなりませんでした。そして、一時間ばかりの後、ふたたび、ここを通りかけました。