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ひとわれをこうしきしゅぎしゃとよぶ
ひと吾を公式主義者と呼ぶ
戸坂 潤
線上閱讀戸坂 潤《ひと吾を公式主義者と呼ぶ(ひとわれをこうしきしゅぎしゃとよぶ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,981 字 · 19 頁
東大数学科の教授である竹内端三博士は私にとって一種の恩師である。先生が八高から一高の教授に転任して来て最初に数学を受け持ったクラスの一つが、私のクラスであった。私は先生に微積分のごく初歩をならった。私は宿題が当って黒板に出て問題を解くという教育にあまり賛成でなかった生徒の代表的な一人であったので、適当に出欠を調節することに専ら数学的才能を傾倒したのであるが、或る時この計算を誤って遂に黒板の前に立たされて了った。
勿論私は少しも予習して来ていなかったから、仕方がなく、自分の納得の行くようなやり方で、問題を「根本」から解決し始めたのだが、とうとう私は黒板の前に呻吟する生徒の最後の一人となって残った。どうにか答は出たのだから、多分問題はやさしいものであったに相違ない。処で竹内教授は私に一場の科学的訓誨を垂れて云うに、数学には、判り切ったことをわざわざ一遍々々繰り返すのを避けるために、公式というものがある。君はその公式そのものから論証しようとするから無駄な時間がかかるのだ。公式位いは覚えておかなくてはいけない、というのであった。
実の処私は大変不服だったのである。