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ひやめしものがたり
ひやめし物語
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《ひやめし物語(ひやめしものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,861 字 · 31 頁
婚約に就いて招いたり招かれたりした。また一方では、召出された挨拶に必要な家々を廻ったり、出仕するとすぐ正経閣の事務に追われたり、殆んど息をつく暇もないようなありさまだった。
年が明けた四月に三番町に住居を貰って移り、慎ましくぬひと祝言の式をあげた。食禄は百五十石、端数は役料である。……こうして、祝言をして二日めの宵だったが、妻の部屋を覗くと、色いろな物をとりひろげた中で、ぬひが独りでそっとなにかしていた。深美から付いて来た下女は厨にいるようだった。――ああ明日は里帰りだったな。
そう思いながら妻の手先を見ると青い色紙で鶴を折っている、大四郎は中村の三兄の話を思いだして笑いたくなった。「まだそんな物を折ってるのかい」
「ああ」突然なのでびっくりしたのだろう。ぬひは身ぶるいをしながら振向いたが、良人が立っているのを見ると赤くなって折鶴を隠した、「まあ少しも存じませんでした。こんなにとり散らかしておりまして申し訳ございません、里へ持ってまいる物をみておりましたので……」
「折鶴もかい」大四郎は笑いながら云った、「なにかそんなしきたりでもあるのか」
「しきたりではございませんの、これは里の近くにある観音堂へ納めるのでございますわ」