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めおとちょう

めおと蝶

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《めおと蝶(めおとちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,977 字 · 47 頁

青空文庫

信乃は襖を閉めて戻り、廊下から畳の上をよく見てまわった。

――良人はみつける。

汚れたところを丹念に拭きながら、頭のどこかでそういう警告を聞いた。良人は必ずみつけるに違いない、あの冷酷な、容赦のない眼から逃れることはできない。

――きっとみつけるに相違ない。

信乃は喉へ固い物が詰ったように感じ、睡をのみこもうとして、嘔きそうになった。

炉の間で雑炊を拵えていると、甲之助のむずかる声がし、乳母が厠へ抱いてゆくのが聞えた。そのあとはまた森閑と鎮まった。……倖わいなのは子供と離されていることだ、甲之助と乳母とは廊下を鍵なりに曲って、五つばかり向うの部屋にいる、良人の好みで召使たちもずっと離れていた。

――でも良人はみつけるだろう。

信乃は雑炊が出来たのを持って納戸へいった。知也は横になっていたらしい、はね起きると垢に汚れた髪や体の、いやな匂いがした。

「わざと此家を覘って来たんです、出口を塞がれてしまってね、大目附の私宅なら安全だと思って、逆に虎穴を選んだわけですよ」

知也は暗がりで匙を取った。居間からさしてくる燈影で、彼の姿がおぼろげに見える、髪もくしゃくしゃだし髭も伸びていた。