輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

もののかげ

ものの影

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《ものの影(もののかげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,794 字 · 18 頁

青空文庫

そうしたことのために、逮捕され、そして投獄されるのは、実にばかげてる。用心しなければいけないぞ、と彼は自分に言いきかした。

刑務所生活というものは、先ず何よりも、自由の拘束として彼の眼に映じた。贖罪とか悔悛とか、そのようなものではなく、ただ具体的に自由の拘束なのだ。なんとしても忌避すべきだ、と彼は思った。

ところが、他方、彼はひどく当惑した。口を噤めば噤むほど、あのことを公言してみたい欲望が起ってきた。自分一人だけが知ってることだ。自分一人だけが感じたことだ。それをなぜ言ってはいけないのか。誰にも告げずに、胸中に秘めて、永久に密閉しておかなければならないのか。ミダス王の理髪師の悩みを、彼は思った。口外出来ないということも、それ自体、具体的に自由の拘束なのだ。

右にも左にも、自由はなかった。眼隠しをして、真直に歩くより外はなかった。そしてあの一本松のあたりが却って、何の気兼ねもない気安いものに思われた。

はじめのうち、彼はその道を通るのは避けた。然しそこは、彼のアパートから国鉄電車の駅に出る近道だった。わざと迂回するのは、もし彼に目をつけてる者があるとすれば、疑念を招く種になるだろう。