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わがまち

わが町

織田 作之助

線上閱讀織田 作之助《わが町(わがまち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 93,840 字 · 186 頁

青空文庫

が、三日目の黄昏前、君枝がさすがに浮かぬ顔をして下足の番をしていると、

「えーうどんの玉ア

あつあつのお玉ちゃん

白い着物(べべ)きて朝から晩まで湯にはいり

つるつるの肌した

別嬪ちゃんのお玉ちゃん

十オあって五銭」

と触れ歩いている声がきこえ、よく聴くと他吉の声だった。

もう腰の曲る歳で、荷が重いらしく、声もしわがれていた。

「まいどおおけに」

下足を渡して、客の出たあとより飛んで出ると、他吉はにこにこしながら、

「どや似合うか」

「よう似合(にお)てるわ」

君枝の声に合わせて、種吉も天婦羅あげながら、

「他あやん、おまはんその方がよう似合てるぜ。声もわるないな」

「そやろか」

他吉は嬉しそうに言って、

「――種さん、人間はお前、どないでもして食べて行けるもんやな。人間はへこたれたらあかんぜ」

これは半分君枝にもきかせ、そして、天びんを左肩へ置きかえると、

「えーうどんの玉ア……」

やがて、声も姿もちいさくなった。

風に吹かれて佇み、見送っていると、向うから東西屋が来て、河童路地の入口で停った。

そして、口上を述べだすと、種吉は路地の奥へ飛んで行き、直ぐお辰と一緒に出て来た。