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わがせいしんのしゅうい

わが精神の周囲

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《わが精神の周囲(わがせいしんのしゅうい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,670 字 · 32 頁

青空文庫

それは京都の言葉であった。第一章の「その二」及び第二章の殆ど全部が、京都が舞台になっているからであった。私も十三年ほど以前に、「吹雪物語」を書いていたとき、京都に一年半滞在していた。それだけに多少の心得はあったが、反面、京都弁のむつかしさも心得ていた。特にこれを個性的に表現することがむつかしい。私の人物にモデルがあれば、言葉の癖をとらえることも易しいが、すべてが架空の人物であるから、それらの人々に京都弁を喋らせて、各自に言葉の個性をもたせることは容易の業ではない。

第一章の「その一」を書き終えたのは去年の十一月であったが、この定稿を新潮社へ渡して、「その二」を書きすゝめてゆくうちに、もどかしさに、たまらなくなった。京都弁を表現し得ないもどかしさに。

私は昨年の暮に東京をたち、この正月を京都で送った。すでにもう小説は「その二」を終って、第二章にはいっていたが、私が病状を決定的に悪化させたのは、この旅行に於いてであった。

私は東京で京都育ちの何人かを助手に雇えばよかったのである。ところが、当時は、そう考えてはいなかった。なまじいに助手を雇うと、仕事は容易であるが、助手の個性に左右されて、目的を逸しはしないか、と考えたからである。