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ひきょうもの
カインの末裔
有島 武郎
線上閱讀有島 武郎《カインの末裔(ひきょうもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,876 字 · 52 頁
「そのとおりでございます。それで私もとうから……」
「とうから……」
「さよう、とうからこの際には土地はいただかないことにして、金でお願いができますれば結構だと存じていたのでございますが……しかし、なに、これとてもいわばわがままでございますから……御都合もございましょうし……」
「とうから」と聞きかえした時に父のほうから思わず乗り出した気配があったが、すぐとそれを引き締めるだけの用意は欠いていなかった。
「それはこちらとしても都合のいいことではあります。しかし金高の上の折り合いがどんなものですかな。昨夜早田と話をした時、聞きただしてみると、この辺の土地の売買は思いのほか安いものですよ」
父は例の手帳を取り出して、最近売買の行なわれた地所の価格を披露しにかかると、矢部はその言葉を奪うようにだいたいの相場を自分のほうから切り出した。彼は昨夜の父と監督との話を聞いていたのだが、矢部の言うところは(始終札幌にいてこの土地に来たのははじめてだと言ったにもかかわらず)けっしてけたをはずれたようなものではなかった。それを聞く父は意外に思ったらしかったが、彼もちょっと驚かされた。