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ガラマサどん

ガラマサどん

佐々木 邦

線上閱讀佐々木 邦《ガラマサどん》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 頁

青空文庫

と松本さんは明答を避けた。これがこの人の好いところだ。

「あゝいう人間は将来見込がない」

「しかし好き/″\で仕方がないでしょう」

「それにしてもさ」

「はあ」

「社長の寺子屋時代はお幾つ頃でしたか?」

と私は又気を利かした。

「八つから入ったように覚えている。明治三、四年だったろう」

「はゝあ」

「お師匠さんはナカ/\厳しかった。我輩は腕白もので叱られ通しさ。しかし胸は敏かった。お師匠さんも『太田原は名詮自性、宗郷じゃの』と頭は認めていてくれた」

「栴檀は二葉より香しかったんですな」

「何あに、十で神童の組さ。到頭こんな馬鹿ものになってしまった」

「何う致しまして」

「ハッハヽヽヽ」

「図抜ける人は矢張り子供の時から違いますよ」

「僕なんか子供の時だって今だって褒められたことはありません」

と松本さんは厭味を言った。

「兎に角、目から鼻に抜けるような子だった。何処へ行っても、太田原の宗郷さんは胸が敏いという評判さ。当時は頭ってことは言わなかった。頭は頭痛の道具とでも思っていたのだろうか?」

「さあ」

「頭の悪いことを胸が疎いと言ったものだ。胸に手を当てゝ考えるとか、腑に落ちないとか、肚だとか度胸だとか胆力だとか、頭の働きを胴中でやっていたんだね」