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ジロリのおんな

ジロリの女

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《ジロリの女(ジロリのおんな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 頁

青空文庫

すると私の目の色は、日毎に濁り、無気味な光をたくわえて行くようである。

そして、私は、時々、変なことをするようになった。街を歩いていると、とある家にハシゴがかゝっていて、屋根屋が屋上で仕事をしているのである。ちょうど私が通りかゝった時、屋根屋が屋根の向う側へノソノソ消えて行く時であった。私はフッとハシゴをつかんで、横に地上に倒して見向きもせず歩きだしていた。

又、ある時、買い物して現れて自転車に乗ろうとする男が万年筆を落して知らずに走り去ろうとするから、よびとめて、万年筆を拾いあげて渡してやった。すると、男が胸のポケットへ万年筆を入れようとして、片手に買い物の包みを持ち、片手でゴソゴソ苦労している、そのジャンパーのポケットから大きな紙入れが半分ものぞけている、とッさに私はそれをスリ抜いて歩いていた。一万円ちょッと、はいっていた。

私はヤス子に関する限り、大浦博士に勝ち誇る気持には、どうしても、なることができない。私の心は、いつも負け、嫉妬しているだけであった。

私はいったい何者だろうと考える。私は遊びふけって尽きないだけのお金をかせいでいる。大浦博士はヤス子とお茶をのむ金にも窮しがちであるかも知れない。