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スウィスにっき
スウィス日記
辻村 伊助
線上閱讀辻村 伊助《スウィス日記(スウィスにっき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 216,275 字 · 410 頁
私は眩んだようになって、氷の上に寝そべった。瞰下ろすとクライン・フィーシェルホルンの空に、鷲が、ゆったり輪を画いていたのも、今思えば、静かな幻に過ぎなかったろう。そのオックスから、左へかけて廻らした、薄いアレトの背ろには、四千米突をこえた山が、四つまで思い切りよく、空につき出しているが、さすがに、フィンシュテラールホルンは群を抜いて、アガシホルンからフギザッテルへかけた山稜は、氷の冴えたのも、まるで刃物のように思われる。
「●グロース・シュレックホルンの西望」のキャプション付きの写真
●グロース・シュレックホルンの西望
こうしている間にも、旅程は、その山々を指しては、氷の上にひろげた地図と首っ引きで、くりかえしくりかえし研究された。実際、山は、私達の希望のとおりで、一度達せられる瞬間に、もう更に高いところへ移されて、心はいつまでも、果す折のない望みを懐いて、どこまでもどこまでもさまよわなければならない、そしてその努力が、何とも云えない楽みである。
明日登る筈のグロース・ラウテラールホルンは、アレトの岩が曲線を画いて、真っ黒な壁に、鋭い氷の褶の獅噛みついているのが、手を延せば届くくらいに見えるけれど、ここから、日帰りは無論、尾根づたいにも行けないので、矢張り朝は一時に起きて、今朝の通り、ここからは氷壁の真下