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ズラかったしんきち
ズラかった信吉
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《ズラかった信吉(ズラかったしんきち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 54,656 字 · 110 頁
信吉はムッツリして働き出した。
暫くすると、
「気にするこたねえ」
グルズスキーが顔は仕事台へ正面向けたまんま小声で慰めるように云った。
「食堂にかかってる表へみんなが好きで名を書きこんだか?――決してそうじゃねえ。スターリンは、公債を買う買わないは自由意志だって新聞で云ってるが、工場委員会の連中が、見張ってやがるんだ。……それにこの工場じゃ、もう一まわりすんでるんだ」
コソコソ声で、グルズスキーがそんなこと云うんで信吉はなお気が腐った。
ボーが鳴った。
工場へ入って初めていやにはずまない気分で信吉が仕事場を出かけたらオーリャが、
「ちょいと! シンキーチ!」
後からおっかけて来た。工場学校をすまして信吉と前後して職場へ入って来たばかりの婦人旋盤工だ。
「見たよ」
人さし指を立てて信吉を脅かすようなふりをしながら、ハハハと笑った。
「…………」
苦笑いして信吉はそっぽ向いた。
「お前、クラブへ行った?」
「いいや」
「じゃ来ない? いいもん見せてやるわ」
木工部の横をぬけ、トロの線路を越して、花壇の方からクラブへ入ってった。
昼休みは、若い連中で賑やかだ。
運動部の室からフットボールを抱えて出て行く。