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ネオンよこちょうさつじんじけん
ネオン横丁殺人事件
海野 十三
線上閱讀海野 十三《ネオン横丁殺人事件(ネオンよこちょうさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,095 字 · 26 頁
「貴様にはもう頼まないや」
そういうと、一平は裏口へ出て行った。
戸外へ出ると一平は、あたりを気にしながら、早足にドンドン駈けだした。彼は電車道を越えて、大久保の長屋町の方に走りこんだが、それから露地をくねくね曲った末に、「おうの屋」と白字を染ぬいた一軒の質屋へ飛び込んだ。
「こないだ預けた銘仙の羽織をちょっと出して貰いたいんだが」
「ああ、その羽織なら、今うけだして持ってお帰りになりましたよ」
「しまった。そいつは質札を拾ってきやがったんだ。それに違いない。そいつは、どんな人間だったい、番頭さん」と、一平は真赤になったり蒼白になったりして、地団太を踏んだのだった。
その時薄暗い土間の隅から思いがけない声がした。
「芝居もどきで気がさしますが、その人間というのは、僕なんです」
「おお、あんたは、誰です」と一平は目を瞠った。
「羽織をかえして下さい。あれは私のだから」
「羽織は返しますよ、ほら。だが、その襟に縫いこんであった、この契約書は、僕に貸して下さい。僕は素人探偵の帆村荘六というものです」
「ウヌ!」獅子奮迅にとびついてくると一平を軽く左に外すと、再び一平が立ち直ってくるその頤のあたりを、ウーンと下から突きあげたアッパー・カット美事にきまって、哀れ一平は帆村の足許に長々と横に伸びた。