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バークレーより

バークレーより

沖野 岩三郎

線上閱讀沖野 岩三郎《バークレーより》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,041 字 · 12 頁

青空文庫

近づいて来た老人にきくと、ミラー翁がここに来た頃は、まだ狼が夜な夜なさまよい出て物すごくほえたそうで、夫人も娘も恐ろしがってここへは来なかったそうである。

『詩人ミラーはひとりでいたんですか。』

当然なすべき質問であった。

『名前は知らないが、日本人がいて炊事を助けたという話しです。』と、老人は答えた。

『その日本人の名はヨネ・ノグチといいませんでしたか。』

『知りませんね。』

老人は、とことこ歩み去った。老人の行った方を見ると、半町ほど隔った所に小さい木造の家がある。

ユーカリプタスの落葉を踏みながら、だらだら坂を登って、その家に近づいて入口からのぞくと、裏口のドアの蔭に、つぶれそうな古い籐椅子に腰をおろした婆あさんがいる。

婆あさんは、こちらをむいて何だかいう。耳をそばだてると

『オーキン、ウオーキン、ウオークイン。』と聞こえる。

呼びかける老婦人こそ、詩人ウオーキン・ミラーの未亡人で、夫の名を呼ぶつもりで『おはいりなさい(Walk in)』といっているのである。

近よると如何にもうれしそうな顔で『ウオーキン』とも一度いって、ウオーキンの意味を説明する。