輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
パノラマとうきだん
パノラマ島綺譚
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《パノラマ島綺譚(パノラマとうきだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 78,920 字 · 153 頁
つまり彼の計画は、まんまと首尾よく成功したのであります。
幸なことには、彼には、この狂言自殺によって泣く程の身寄りもありませんでした。無論彼の郷里には、家兄の家もあり(在学当時彼はその兄から学資を貰っていたのですが、近頃では兄の方から彼を見捨てて了った形でした)二三の親族もあったのですから、それらの人が彼の不時の死を聞き知ったならば、多少は惜しみもし、歎いても呉れることでしょうけれど、その程度のさし触りは、元より覚悟の上でもあり、彼として別段心苦しい程のことでもないのです。
それよりも、彼は、この自分自身を抹殺して了ったあとの、何とも形容の出来ない、不思議な感じで夢中になっていました。彼は最早や、国家の戸籍面に席もなく、広い世界に唯一人身寄りもなければ友達もなく、其上名前さえ持たぬ所の、一個のストレンジャーなのでありました。そうなると、自分の左右前後に腰かけている乗客達も、窓から見える沿道の景色も、一本の木も、一軒の家も、まるでこれまでとは違った、別世界のものに感じられるのでした。それは一面、非常にすがすがしい、生れたばかりという気持でありましたが、又一面では、この世にたった一人という、しかもその一人ぽっちの男が、これから身に余る大事業を為しとげねばならないという、名状し難き淋しさで、はては、涙ぐましく