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フシギなおんな

フシギな女

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《フシギな女(フシギなおんな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,406 字 · 35 頁

青空文庫

洋品屋では、オーバーのポケットから札をつかみだして、百円札で四枚、十円札で六十二枚、それを算えるのに十分もかゝったが、多すぎるので百円札一枚返すと、それをポケットへねじこんだそうだ。ラジオがウタのオバサンをやってましたから八時五十分ごろですよ、そこのお婆さんの証言は探偵小説的である。

最もよく見たはずの人物、同じ店の出前持で、二階にねていて唯一人難をのがれた山口さんの証言、いや、手記(毎日新聞二月二十五日)が、あべこべに甚しく印象的なところがないな。太田成子という個性を捉えたところがない。「別に怪しい素ぶりもなく普通に働いていましたが、ただお客が飲み食いした後は必ず店内を掃き、ゴミを裏まで捨てに行ったので、一々裏まで行かなくともいいと言いましたが、それから寝るまで三四回は裏木戸から外に出たようです」というのがこの手記中で成子嬢の示した唯一の異様な行動であるが、これ以外にも特徴のある行動がなかった筈はなかろう。彼はただ、彼女をおそく訪れた男があった、という事実を後刻に至って知ったから、それにてらして思い当った観察であろう。思い当る節がないと見逃している観察眼だ。