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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
線上閱讀梅崎 春生《ボロ家の春秋(ボロやのしゅんじゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,411 字 · 263 頁
しかしそのような情景を彼は想像してみるだけで、それ以上に気持をうごかして三元のことを考えることは、彼にはひどく僭越なことに感じられた。どんなことをおれが考えることが出来るだろう。思いは直ぐにそこに走った。彼はあの日の発田のことを思い出した。
(たといどんなに折れ曲っていたにしても――)青ぐろく緊張した発田の表情を思い浮べ乍ら彼は考える。(発田があの草津節を叩きだしたような全身的な衝動を、人間はなぜ瞬間瞬間に持てないのか?)
しかしあの時でも、彼は発田の動作に惨めな笑いを感じていたのであった。あるいはそれ故に、草津節の旋律の破片が、復讐のように彼の胸をこすり上げてきたのではあったが。――
(一度小菅まで行って見よう。そしてそれから、またいろんなことが俺のなかで始まるかも知れない)
彼はそんなことを考えた。
家賃のことについて、発田に彼がかけあったかどうか、それを白木は探りにきたに違いなかった。花札をやりながら、遠廻しな言い方で、白木がその件に触れた。
「いえ。まだかけあってはいませんよ」と彼はぼんやりと笑いながら答えた。「歩合をいただくよりも、花札で貴方から勝った方が、早そうですからね」