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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
線上閱讀梅崎 春生《ボロ家の春秋(ボロやのしゅんじゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,411 字 · 263 頁
カスミ網に小鳥がかかるのは、たいてい昼間である。微細な網目に両脚をつっこんで、逆さにぶら下って、チイチイと啼き叫んでいる。騒げば騒ぐほど、網がからまってゆく仕掛けになっているらしい。しかしどんなに啼き騒いでも、私が居る限りは、古畑の家から誰も取りに出て来ないのだ。小鳥はむなしく啼泣しているのみである。ところが私が外出して帰ってくると、あるいは夜寝て朝起きて見ると、小鳥の姿はもう見えなくなっている。上厠して戻ってきたとたんに、消えてなくなっていたこともあった。だから本当を言えば、カスミ網にかんする限り、誰がこれを張り、誰が小鳥を獲得しているのか、その現場を私は未だ見たことがない。しかし西窓をあけてのぞくと、古畑家のふるびた軒端や縁側の鳥籠に、それらしい小鳥がホーホケキョと啼いていたりするから、それだと推定できるけれども、それをやるのは古畑の主人なのかお内儀さんなのかは、私にもよく判らない。またどちらでもかまわない。小鳥にしても、カスミ網から鳥籠に移動しただけだから、それも別段言い分はない。捕えられたのは、小鳥の不運であって、私の不運ではないのである。