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マクシム・ゴーリキイのでんき
マクシム・ゴーリキイの伝記
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《マクシム・ゴーリキイの伝記(マクシム・ゴーリキイのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 60,543 字 · 120 頁
の色で彩られているような、ある複雑な不決定と、期待、歓喜が彼の感情を満していたように察せられる。
レーニングラードの六月の静かな朝。ヨーロッパ・ホテルの一室、十月大通りを見下す方に大きな窓が開いている。赤っぽい、そう新しくない絨毯が敷いてある。隣室へ通じるドアの近くにゴーリキイが腰かけている。シャツも上衣も薄い柔かい鼠色で、それは深い横皺のある彼の額や、灰色がかって、勁さと同時に感受性の鋭さを示している瞳の表情、特徴のある髭などとよく調和して感じられた。彼は、低い平凡なホテルの客間用肘掛椅子にかけている。大きいさっぱりと温い手を自分の前で自然に組み合せている。斜向いのところに丸テーブルがあって、その上にはもうさめ切った一片のトーストが皿にのったまま忘られたように置かれている。
私は細い赤縞の服を着てそのテーブルに向い、わきに立って私の上にかがみかかっている友達に、時々綴りを訊きながら、本の扉にロシア語を下手な字で書きつけている。私はゴーリキイに自分の小説を一冊贈るために持って行った。その扉に「予想されなかった遭遇の記念のために。マクシム・ゴーリキイへ」