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モスクワのすがた

モスクワの姿

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《モスクワの姿(モスクワのすがた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 1,697 字 · 4 頁

青空文庫

モスクワに着いてやっと十日めだ。

一九二七年のクリスマスの朝だが、どういうことがあるのか自分たちには見当がつかない。

ソヴェト同盟で、街じゅうが赤旗で飾られるのは春のメー・デー、十一月の革命記念祝祭などだ。

クリスマスそのものが、誰の降誕祭かと云えばイエス・キリストで、眼の丸かった赤坊ウォロージャ(レーニン)の誕生日ではない。ロシア語はろくに読めないが、国立出版所で插画が面白いから買った本が一冊ある。題は「聖書についての愉快な物語」。第一頁をやっとこさ読んで見たら、こんな風に書いてあった。

「諸君。一冊の本がある。それを教会で坊主が読むときには、みんな跪いて傾聴する。開けたり閉めたりする時には、一々接吻する。その本の名は聖書だ。

ところで、聖書には、神の行った実に数々の奇蹟が書かれている。神は全智全能だと書かれている。けれども、妙なことが一つある。それは、その厚い聖書を書いたのは神自身ではない。みんな神の弟子たちだということだ。ヨブだのマタイだのと署名して弟子が書いている。全智全能だと云いながら、して見ると神というものは本はおろか、自分の名さえ書けなかった明きめくらだったんだ。