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ヤトラカン・サミはかせのいす
ヤトラカン・サミ博士の椅子
牧 逸馬
線上閱讀牧 逸馬《ヤトラカン・サミ博士の椅子(ヤトラカン・サミはかせのいす)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,010 字 · 26 頁
婆羅と、美須奴と、邪魔と。
婆羅は、創生を役目とする。
美須奴は、保存をつかさどる。
邪魔は、破壊を仕事にする。
と、いったように、理屈で、こうはっきり三座に区別されているくらいだから、じっさい信仰する場合には、めいめいが、このなかのどれか一つを選びとって、それを自分の吠陀としているにすぎない。で、事実は、やはり一神教なのである。要するに、印度四階級中最高の地位を占める僧侶階級のうちである学者は生産の婆羅を採り、他の人々は温容の美須奴に走り、また別派は、破壊の大王である邪魔に就いて言いようのない苛行をくぐりながら、ひたすら転身をこいねがう。そして、これら三つの神性が、それぞれの婆羅門にとって Veda であるところに、全印度教を通じての確実な単一教会ができあがっているのだ。ヤトラカン・サミ博士が、その一つの邪魔派を標榜する練達の道士であることは、いうまでもないのである。
こうして、Siva は破壊の吠陀である。破壊は、いま実在するものをいったん無に帰して、そのかわり、そこに全く新しい実在を築こうとする第一の着手だ。だから、ヤトラカン・サミ博士は、こころからふるえおののき、剃刀を遠ざけ、月光石を崇め、板っぺらの沓をはき、白髪の髷を水で湿し、手相見の紙着板を首にぶら下げ、大型移動椅子を万年住宅としてつつしん