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かじとポチ

一房の葡萄

有島 武郎

線上閱讀有島 武郎《一房の葡萄(かじとポチ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 23,753 字 · 48 頁

青空文庫

に読み上げているとか、むすめの群れがおどりながら現われたとか、およそ町に起こった事を一つ一つ手に取るように王子にお話をしてあげました。王子はだまったままで下を向いて聞いていらっしゃいます。やがて花よめ花むこが騎馬でお寺に乗りつけてたいそうさかんな式がありました。その花むこの雄々しかった事、花よめの美しかった事は燕の早口でも申しつくせませんかった。

天気のよい秋びよりは日がくれると急に寒くなるものです。さすがににぎやかだった御婚礼が済みますと、町はまたもとのとおりに静かになって夜がしだいにふけてきました。燕は目をきょろきょろさせながら羽根を幾度か組み合わせ直して頸をちぢこめてみましたが、なかなかこらえきれない寒さで寝つかれません。まんじりともしないで東の空がぼうっとうすむらさきになったころ見ますと屋根の上には一面に白いきらきらしたものがしいてあります。

燕はおどろいてその由を王子に申しますと、王子もたいそうおおどろきになって、

「それは霜というもので――霜と言う声を聞くと燕は葦の言った事を思い出してぎょっとしました。葦はなんと言ったか覚えていますか――冬の来た証拠だ、まあ自分とした事が自分の事にばかり取りまぎれていておまえの事を思わなかったのはじつに不埒であった。