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みっつのうそ
三つの嘘
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《三つの嘘(みっつのうそ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,740 字 · 10 頁
この子供たちの年齢が彼の年齢と距りの多いのも、彼の出身を物語ってるもののようであります。
六ヶ月ばかり前から、国内の遠方に動乱が起って、それが一種の政治革命の気配を帯び、また国際戦争の萠しを帯びて、重々しい雰囲気が社会全般を蔽いつつあった頃のことでした。或る晩、元は珍らしく酔って帰って来ました。尤も、この一二ヶ月、彼は苛立ったり打沈んだりしてることが多く、飲酒の量が著しく増していたのであります。
もう十一時をすぎていました。元は召使に、子供たちの在否を尋ねますと、三人ともまだ帰宅していませんでした。それはいつものことで、三人の青年は夜遅くまで外へ出歩くのを常としていたのですが、元はちょっと考えこんで、それから厳しく命じました。
「帰って来たならば、必ず、私の室に来るように伝えてくれ。夜が明けるまでも、私は起きて待っているから。」
そして彼は自室に、酒の仕度をさせました。紫檀の大きな事務机が据えられ、金銀の飾り物が並べられ、絨毯が敷きつめられてる室で、元は召使を遠ざけてただ一人、煖炉のそばの長椅子にねそべって黙り込んでいました。卓子の、水瓜の種や、ハムや、肉饅頭などの皿にも、手をつけず、火桶の銅壺でぬるく温めた銀瓶の酒を、小さな盃で時々ぐっとあおりました。