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しがつばか

世相・競馬

織田 作之助

線上閱讀織田 作之助《世相・競馬(しがつばか)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,112 字 · 39 頁

青空文庫

勿論部屋は狭かった。佐伯は四畳半あると言っていたが、私は数えてみて三畳半しかないのにびっくりした。

さすがの佐伯もそんな部屋にいてはますます病気を悪くするばかりだとチリチリ焦躁を感じていたらしかったが、ほかのアパートや部屋へ移ろうとしない。その気になれないのだ。ほんのちょっとした弾みがつかないのである。得体の知れぬ部屋の悪臭をかぎながら、つまりこれがおれの生活の異臭なんだと、しかしちょっと惹きつけられてみたり、そうかと思うと、それを毎夜なんのあてもなしにそわそわと街へ出掛けて行く口実にしていた。ひとつには彼が街をほっつき歩くのは孤独をまぎらすためである。彼のような寂しがり屋を私は見たことがない。自分が死んだという噂を聴いてもそんなに悲しまなかったのも、たとえ碌でもない噂にせよひとが自分の噂をしているということが嬉しいのである。全く忘れられてしまうのが辛いのだ。その頃彼はこんな夢を見たといって私に語った。――病気もいよいよいけなくなり死んでしまった。どこかの家の二階の階段を上った狭くるしい場所で長くなって死んでいた。だらんと伸びた足が黒足袋をはいて階段に掛っている。