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おかのうえ
丘の上
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《丘の上(おかのうえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,034 字 · 23 頁
丘の上には、さびれた小さな石の堂があって、七八本の雑木が立並んでいた。前面はただ平野で、部落も木立も少く、農夫の姿も見えない、妙に淋しい畑地だった。遠くに一筋の街道が、白々と横たわっていた。その彼方、暗色に茫とかすんでる先に、帯を引いたような、きらきら光ってる海が見えていた。
その丘の上の、木立の外れの叢の上に、彼等は腰を下した。枝葉の密なこんもりと茂った白樫が、濃い影を落していてくれた。彼は帽子とステッキとを傍に投り出して、ハンカチで顔を拭いた。汗を拭き去られたその額が、蒼白かった。が彼女の顔は、白樫の葉裏の灰白色の反映を受けてか、更に蒼白かった。眼を伏せて、日傘の柄を膝の上でもてあそんでいた。
どこにも入道雲の影さえ覗き出していないのが、不思議だと思われるくらいに、空はあくまで晴れ渡って、真夏の日の光が、あたり一面に、そして眼の届く限り一面に、じりじり照りつけていた。淋しい蝉の声が、木立の中に封じこまれていた。乾燥しきった微風が、ゆるく流れていった。
「あああれですね。」
「ええ。」
「いつもあんなですか。」
「晴れた日は大抵光っていますの。そして夜になると、篝火が見えるんですって。