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『ケプロン・くろだのこうそう』について

中谷宇吉郎集 第八巻

中谷 宇吉郎

線上閱讀中谷 宇吉郎《中谷宇吉郎集 第八巻(『ケプロン・くろだのこうそう』について)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 85,890 字 · 178 頁

青空文庫

そうすると、溶液は結晶表面のすみまで、よく行き渡る。この状態で、摂氏マイナス五度くらいのところに、数時間放置する。すると塩化エチレンは蒸発して、ポリビニルの薄膜が雪の結晶の表面に残る。ちょうど天ぷらの衣のようなものになる。このとき標本を暖かい部屋に持ち込むと、雪は溶けて水となり、この水はポリビニルの薄膜を通して蒸発してしまう。あとには、天ぷらの皮だけが残るわけである。この皮は非常に薄いもので、結晶の形はもちろんのこと、表面の微細な構造までも、よく現わしている。顕微鏡で見ても、もとの結晶そのままに見える。コロホニウムを使った場合とは、全く隔世の感がある。材料の発達ということは、恐ろしいものである。

顕微鏡写真の発達によって、雪の結晶の研究は大きい進歩をしたが、この化石をつくる方法、すなわちレプリカ法の発見によって、雪の研究がさらに便利になった。寒いところで、結晶の顕微鏡写真を長時間にわたって撮り続けることは、非常に困難である。野外の不便なところへ、顕微鏡写真装置をもって行くこと自身が、大仕事である。その点レプリカ法は、溶液を一びんもって行くだけですむので、非常に便利である。