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『ケプロン・くろだのこうそう』について
中谷宇吉郎集 第八巻
中谷 宇吉郎
線上閱讀中谷 宇吉郎《中谷宇吉郎集 第八巻(『ケプロン・くろだのこうそう』について)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 85,890 字 · 178 頁
六年になって、二桁の掛算が出来ない子供が、ちっとも珍しくない。
ところが、そういう点を、アメリカでは、ちっとも気にしていない。それよりも、通信簿には、理解力とか、社交性とか、という欄があって、その方を皆が重視している。いわゆる学力がつかないことを、誰もそう気にしないのは、一つにはアメリカには入学試験がないからである。この点は重大であるから、後に詳述する。今一つの理由は、義務教育に対する考え方が、まるでちがっているからである。
義務教育というのは、国家が法律の力でもって、国民に義務として強要するものである。一方学問は、よいものではあるが、これは学問を希望する人がやるべきもので、国家の力で強要すべきものではない。事実、学問がなくても、人間として立派な人はいくらもあり、また学問などとは無関係に、一生平穏に暮す、善良な国民もたくさんある。それで義務教育は、何も学問を教える教育である必要はない。従って、学力の低さなどということは、初めからあまり問題にしていない。これは理想論ではなく、事実、掛算などできなくても、社会に出て、ちっとも困らないのである。どんな店にも、それ相当の計算器があるので、算術を知らなくても、結構店員はつとまる。