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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
線上閱讀林 不忘《丹下左膳(たんげさぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 頁
一枚しめ残した雨戸のあいだから手洗をつかいながら、何気なく向うの繁みを見ると、風もないのに縞笹の葉が揺れ動いて、そこにむっくりと起ちあがった黒い影があった。
子供!――とも見れば見られる、それに、長い両腕をだらりと地にさげて、背中を丸く前かがみに立ったところ、気のせいか、仙之助には猿のようにも思えて、かれはわれにもなく驚愕の声を放つところだった。
が、さてはおのれ妖怪変化のたぐい! と仙之助がひそかに気負いこんだ時、その小さな人影はけむりのように消え失せてあとかたもなかった。
ふしぎなこともあるものだと仙之助は首をかしげたが、酒の席へそんな話を持ち出したところで一笑に付せられるばかり、かえって自分が臆病なように聞こえるだけだと、彼は座へ戻ったのちも、この庭前に見かけた奇怪な影法師について何一つ言わなかった。
酒気と煙草のけむりでむせかえりそうな部屋に。
着いてまもなくまだ客分扱いされている月輪軍之助、各務房之丞、山東平七郎、轟玄八、岡崎兵衛、藤堂粂三郎、山内外記、夏目久馬等全十七人の相馬の剣士を上座にすえて、手柄顔のつづみの与吉、それに主人役の鈴川源十郎、食客丹下左膳などがギッシリつまって、その間、飯あり肴ありお菜あり、まるでちらし寿司を見るような色とりどりの賑かさである。