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ちぶさ

乳房

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《乳房(ちぶさ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 27,932 字 · 56 頁

青空文庫

「あっちじゃ、女の同志をハウスキーパアだの秘書だのという名目で同棲させて、性的交渉まで持ったりするようなのはよくないとされているらしいわね。――何かで読んだんだけれど」

ひろ子たちの仲間で「あっち」というときは、いつもソヴェト同盟という意味なのであった。

「ふーん」

今度はタミノが顔をあげた。眉根をキと持上げるような眼でひろ子を見て、何か云いかけたが、そのまま黙って針を動かしつづけた。

やがて、靴下つくろいを終って、タミノは、維持員名簿をめくりながらハトロン封筒へ宛名を書きはじめた。

夜が更けて、風が当ると庇のトタンがガワガワ鳴った。その木枯しが落ちると、道の凍てるのがわかるような四辺の静けさである。タミノが万年筆の先を妙に曲げて持って字を書いている。減ったペンと滑っこい紙の面とが軋みあって、キュ、キュと音をたてている。

そのキュ、キュいう音を聴きながら自分も仕事をつづけているうちに、ひろ子の心は一つの情景に誘われた。六畳、四畳半、そういう家には遠山に松の絵を描いたやすものの唐紙がたっている。そのこっちのチャブ台で、ひろ子が、物を書いていた。もう暁方に近かった。