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ふたつのいえをつなぐかいそう
二つの家を繋ぐ回想
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《二つの家を繋ぐ回想(ふたつのいえをつなぐかいそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,480 字 · 37 頁
今年の春休こそは、呼んで上げよう。それ迄に、どうか云うことはないように。自分は冬の中から願って居たのである。
二月に引越せたと云うことは其為にも都合がよかった。三月に入るとすぐ、自分達の心構えを知らせ、上京を促した。私は、悦ばしく、自分の出来る限りを尽す気持で、派手になった十七八頃の銘仙衣類等を解いて、彼の使うべき夜着になおしたり何かした。
彼も来られると云う。四月の始め迄居る積りで、三月の二十日以後に此方は出発しようと云って来た。それ等のことで仕事が出来なくなるのは眼に見えて居る。然し、自分にとって、今度、彼を迎えると云うことは、其不快以上の歓びと感じられた。自分は、それ迄にと思って、約束のある原稿は書き、心をからにして、老人を迎える仕度にかかったのである。
処が、生憎、三月に入ると、とり(女中)の娘が病気にかかって、家に居られないことになった。
上の娘は、三輪の郵便局の細君になって居る。二女が二十一二で、浜田病院に産婆の稽古をして居る。うちにもちょくちょく遊びに来る、色白な、下膨れの一寸愛らしい娘であった。先頃、学校を出たまま何処に居るか、行方が不明になったと云って、夜中大騒ぎをしたことがある。