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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《二つの庭(ふたつのにわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 頁

青空文庫

「買うならこういう機会だね」

遊びに行っていた伸子も、両親や弟たちに交って、いろいろの自動車会社から出されたカタログを見た。

「多計代のハイヤー代だけでも相当だし、俺はどんなに能率があがるかわからない……しかし、贅沢な車は駄目だよ。第一、門が入りゃしない」

伸子の知らない幾晩かの相談の末、イギリスのビインが買われた。小型の黒い地味なビインにふさわしく、小柄で律気な機械工出の運転手の江田が通いで雇われた。江田は一風ある男で、はじめて来たとき、お仕着せは絶対にことわった。佐々のお古を頂きたい、と約束した。そして、お下りのハンティングをかぶって、毎朝八時というと、小柄の体をひどく悠然と運んで通って来るのであった。

いま、竹垣のそとにホースをつかっている江田の姿を目にうかべ、伸子は、思わず一人笑いをした。父をなつかしむ笑いをもらした。泰造は米沢に生れて、イとエの発音がさかさになることがあった。字でかけばちゃんと書いたが、発音では逆になった。江田が運転手になったとき、佐々は伸子に、

「運転手が、いい男でよかった。イダっていうんだよ」

と教えた。伸子は井田というのだと思って、そうよんでいた。