輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

ふたつのてがみ

二つの手紙

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《二つの手紙(ふたつのてがみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,799 字 · 24 頁

青空文庫

あるいは事によるとこれも、あの前兆だったかも知れません。私は突然この恐しさに襲われたので、大時計を見た眼を何気なく、電車の線路一つへだてた中西屋の前の停留場へ落しました。すると、その赤い柱の前には、私と私の妻とが肩を並べながら、睦じそうに立っていたではございませんか。

妻は黒いコオトに、焦茶の絹の襟巻をして居りました。そうして鼠色のオオヴァ・コオトに黒のソフトをかぶっている私に、第二の私に、何か話しかけているように見えました。閣下、その日は私も、この第一の私も、鼠色のオオヴァ・コオトに、黒のソフトをかぶっていたのでございます。私はこの二つの幻影を、如何に恐怖に充ちた眼で、眺めましたろう。如何に憎悪に燃えた心で、眺めましたろう。殊に、妻の眼が第二の私の顔を、甘えるように見ているのを知った時には――ああ、一切が恐しい夢でございます。私には到底当時の私の位置を、再現するだけの勇気がございません。私は思わず、友人の肘をとらえたなり、放心したように往来へ立ちすくんでしまいました。その時、外濠線の電車が、駿河台の方から、坂を下りて来て、けたたましい音を立てながら、私の目の前をふさいだのは、全く神明の冥助とでも云うものでございましょう。