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しつらくえんさつじんじけん

二十世紀鉄仮面

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《二十世紀鉄仮面(しつらくえんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 38,489 字 · 77 頁

青空文庫

所が、この薬師仏に仕える老人は、一々犯人の足跡を指摘して行った。

「確か十時半頃でしたか、誰が鎖を解いたものか、飼犬の啼き声が池の方でしますのでした。それで、捕えに行こうとして薬師堂の前を通ると、内部では方丈様が御祈祷中らしく、後向きに坐ってお出でになりました」

「なに、君もか」瞬間、思わず三人の視線が合ったけれども、久八は無関心に続けた。

「所が、その時可笑しなものを見ましてな。縁日の晩にしか使わない赤い筒提灯が両脇に吊してありまして、二つ共に灯が入って居りました」

「ホウ、赤い筒提灯が※(感嘆符疑問符、1-8-78)」と法水は衝動的に呟いたが、その下から、眼を挙げて先を促した。

「それから池の畔に行ったのですが、真暗なので犬を深す事が出来ません。それで致し方なく、口笛を鳴らしながら彼此三十分近くも蹲んで居りますうちに、向う岸の雫石さんの裏手辺りに誰かいたと見えて、莨の吸殻を池の中へ投げ捨てたのが眼に入りましたので。その癖、寺では莨喫みが儂一人だけで御座いますが」

「では、帰りにも提灯が点いていたかね?」

「いいえ、提灯どころか、扉が閉っていて真暗でしたが」