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はたちのエチュード

二十歳のエチュード

原口 統三

線上閱讀原口 統三《二十歳のエチュード(はたちのエチュード)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 61,578 字 · 125 頁

青空文庫

棧橋の上で僕らとニーチェとは袂を分った。

「君にはさし当たって職業がない。これからどうするのだ」

とヴァレリイが尋ねた。

「君の工場を見に行こう」と僕は答えた。

途中で僕らはいろいろな人々に行き逢った。そして僕は、かつての僕の生産工場が、主人を失った空家となって、さびれ果てているのを見た。

僕は清岡さんに見せたかった、と思った。彼と別れてのちに、僕はまじめに働いたのだ。そうして、この大きな工場を完成したのはつい最近のことだったが、僕はそれを棄てたのだった。ヴァレリイの工場で、僕は彼の仕事振りを感心して見物した。

「たとい夢にでも、何らかの壮麗な建築の企画を夢みない輩、……」とヴァレリイは、機械を愛撫しながら、おしゃべりを始めた。

「僕と、君とが友達になれたのは不思議なことだ」

「僕にだってそうした企画がないわけではない」

と僕は意地悪く言った。

「教えてくれたまえ」

「役者になるのさ」

「何の」

「喜劇だ。その筋書の企画がすばらしいのさ。僕の役者が、本物の狂人になって、舞台から飛び下りて自殺するのだ」

「本物の?」とヴァレリイは呆れた顔をして訊いた。「それじゃ、芝居じゃないではないか」