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につうのしょかん
二通の書翰
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《二通の書翰(につうのしょかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 1,325 字 · 3 頁
小説家後藤宙外氏が鎌倉に住んでいた比のことであると云うから、明治三十年前後のことであろう、その時鎌倉の雪の下、つまり八幡宮の前に饅頭屋があって、東京から避暑に往っていた××君がその前を通っていると、饅頭屋の主翁が出て来て、
「あなたは××さんと云う方ではございませんか」
と己の姓名を云うので、そうだと云うと、
「こんなことを、だしぬけに申しましては、へんでございますが、二階堂の方の別荘にいらっしゃる――と云う奥さんが、あなたをお見かけ申したら、どうかお遊びにいらしてくだされるように、お願い申してくれと、こんなに申しつかっておりますから、どうかそこへお遊びに往ってやってくださいませ」
と云った。××君はそんな女にちかづきはなかった。
「それは、なにか人ちがいでしょう、僕はそんな方は知らないから」
「奥さんも、わたしの名なんかお忘れになっていらっしゃるだろうが、たいへん御厄介になった方だから、是非お目にかかりたいと思っているうちに、昨日八幡様の前でお目にかかったから、その時声をかけようと思っているうちに、つい声をかけそこなったから、明日でもこうしたかっぷくの方で、××さんとおっしゃる方がお通りになったら、どうしてもお遊びにいらっしてくださるように、お願いしてくれと、くれぐれもお頼みになって帰りました、決して人ちがい