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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
線上閱讀幸田 露伴《五重塔(ごじゅうのとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 頁
畳踏まるる足も軽く、先に立ったる小僧が襖明くる後より、すっと入りて座につきたまえば、二人は恭い敬みてともに斉しく頭を下げ、しばらく上げも得せざりしが、ああいじらしや十兵衛が辛くも上げし面には、まだ世馴れざる里の子の貴人の前に出でしように羞を含みて紅潮し、額の皺の幾条の溝には沁出し熱汗を湛え、鼻の頭にも珠を湧かせば腋の下には雨なるべし。膝におきたる骨太の掌指は枯れたる松が枝ごとき岩畳作りにありながら、一本ごとにそれさえもわなわな顫えて一心にただ上人の一言を一期の大事と待つ笑止さ。
源太も黙して言葉なく耳を澄まして命を待つ、どちらをどちらと判けかぬる、二人の情を汲みて知る上人もまたなかなかに口を開かん便宜なく、しばしは静まりかえられしが、源太十兵衛ともに聞け、今度建つべき五重塔はただ一ツにて建てんというは汝たち二人、二人の願いを双方とも聞き届けてはやりたけれど、それはもとよりかないがたく、一人に任さば一人の歎き、誰に定めて命けんという標準のあるではなし、役僧用人らの分別にも及ばねば老僧が分別にも及ばぬほどに、この分別は汝たちの相談に任す、老僧は関わぬ、汝たちの相談の纏まりたる