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しぐれがさ

人情武士道

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《人情武士道(しぐれがさ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 24,700 字 · 51 頁

青空文庫

「凝」が落ちたのだ。……針の尖ばかり瞶めていた眼が、その一瞬に広い天空を見たのであった。

――これだ、これだ。

宗七は、心の中で叫んだ。

――己は自分で自分を埋める穴を掘っていたんだ。穴から出よう、……仕事はそれからだ。

「権太夫」

正倫は用人の方を見て、

「どうだ、余の商法はたしかであろう」

そう云いながらもう一度声高く笑った。

まことに奇妙な約束である。然し宗七は御前を首尾よく退出した。……御門を出ると、まだ降りやまぬ時雨のなかに、お雪が待兼ねていて走り寄った。

「どうでございました? あなた」

「お雪!」

宗七は今度こそはっきりと、力のある声でお雪の名を呼んだ。

「大鋸町の店へ行こう」

「え? お父つァんのところへ?」

「親方に会って、おまえを女房に貰って来るんだ。宗七は改めて出直す、昨日までのうじうじした気持もいけなかったんだ。……いま堀田のお殿様にお目通りをして熟々感じたぞ、人間は心を寛く持たなくちゃあいけねえ。其日の食に不足しても心は大名のように大きくもつんだ……大名のような寛い、大きな心持でやるんだ。親方に会って、なにもかも話して、それから……始めるぞ」